2023/02/07

Twitterのログを見ていると初めてパスピエを聞いたのは2018年らしい。それからずっとパスピエを聞いてきているわけではないけれど、新しいアルバムが出れば一通り流して、時たま思い出したように永すぎた春を聞くみたいな、そういう温度感だったと思う。初めてパスピエのアルバムのリリースを目撃したのは、more humorだった記憶もある。

ライブで聞きたいなという思いは頭の片隅にぼんやりとあり、でも自分から積極的にチケット情報を探しに行くみたいな積極性はなく、そのまま何年も何年も過ごしてしまった。

先日、友だちと好きなバンドの話になって、そういえばパスピエはずっと細く長く聞いているという話をしたときに、ふと結局ライブに行っていないことを思い出した。ugokubakuのチケット一般販売の知らせを見たのは、その帰り道のことだった。


 

半ば反射的にチケットを買って二ヶ月。ついに日曜、人生初のパスピエのライブに参加してきた。ugokubakuツアーファイナル東京。O-EAST

一日経ってもなお、パスピエの音楽は魔法だと思う。勇気をくれるとか、立ち直るとか、そういう類とはまた別の魔法。自分をここじゃない世界へ連れて行く、なんともふわふわした魔法だ。

Voのもつ独特な声質であったり、シンセサイザーの鳴らす蠱惑的な音だったり、そういった、パスピエの持ついろんな要素の中に魔法のかけらがたくさん、たくさん紛れ込んでいる。一度その音を聞けば、一瞬でここじゃないどこかへ飛べる。そんな気がする。

最近はどんなライブに行っても、音源とぜんぜん違う、という感想を抱いてしまう(あたりまえといえばあたりまえなんだろうけど)。それはパスピエも例外ではなかった。なんというかずいぶんと分厚くて、携帯で聞くより一層、浮遊感がする。

今回はukabubaku発売記念の全国ツアーだったけれど、セットリストにはukabubaku以外からもたくさんの曲が選ばれていて、それが僕にとってはとても幸いだった。曲としては&DNAとかmore humor収録曲のほうが実は好きだし、永すぎた春をはじめて聞いたときの衝撃を忘れられないから。それに、昔の曲の流れの中から繰り出されるukabubaku収録の最新曲は、単体で聞くより一層ぐっと心に響く。

曲を聞く割にパスピエはどんな人たちなのかをあまり知らなくて、だから初めて見たパスピエのメンバーの人たちは、とてもギャップで溢れていたと思う。

特にキーボードの成田さんの激しさは僕にとってはかなり意外だったし(キーボードは静かな人がやりがちという偏見もある)、ギターの三澤さんはそのいかつい見た目とは裏腹に可愛らしい挙動で、ファンの人から愛されてるんだなというのが素人目にもわかるほどだ。


東京に来て、もう4年も経とうとしている。東京には、秋田や群馬と比べると考えられないくらいたくさんの文化施設があって、美術館とか、映画館はもちろん、ライブハウスだって。

バンドはいつまでも続くものじゃくて、いつか解散したりなくなったりしてしまうものだから、行けるうちに、好きなバンドにはたくさん会いたいなと思う。あってその時だけの刹那のパフォーマンスを見つめて、そのたびにまた、その人達の音楽を好きになりたいなと思う。